レンタルオフィスのセキュリティ対策とは?確認すべきポイントを解説

オフィス移転や起業を控えて、安全に働けるビジネス環境を探している方に向けて、レンタルオフィス選びで後悔しないためのポイントを解説します。
この記事では、レンタルオフィスのセキュリティ対策において必ず確認すべき物理面・ネットワーク面の違いや具体的なチェックポイントをお伝えします。
レンタルオフィスのセキュリティはなぜ重要なのか?

レンタルオフィスは、自社専用の賃貸オフィスとは異なり、不特定多数の企業や人が同じ建物内に出入りする環境です。そのため、一般的なオフィス以上にセキュリティに対する意識が求められます。ここでは、なぜオフィス選びにおいてセキュリティが重要視されるのか、3つの観点から解説します。
企業の信用問題に直結する
事業を運営する上で、企業への信頼はあらゆる取引の基盤となります。例えば、セキュリティ対策が不十分なオフィスに入居していることがクライアントに伝われば、重要な案件を任せることに不安を抱かれる可能性があります。
情報漏えいなどのインシデントが発生した場合、被害の補償だけでなく、社会的な信用の失墜という大きな代償を払うことになりかねません。これは、事業の存続すら危ぶまれる事態につながります。
適切なセキュリティを備えたオフィスを選ぶことは、取引先に対して自社はリスク管理を適切に行っているという姿勢を示すことと同義だと言えます。
顧客情報や機密情報の漏洩を防ぐ
日々扱う顧客の個人情報や、開発中の新製品データなど、外部に漏れてはならない機密情報の保護は企業の義務です。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発行する「情報セキュリティ白書2024」のデータによると、2023年に発生した個人情報漏えい・紛失事故は年間175件にのぼり、多くの場合で不正アクセスや情報端末の盗難・紛失が原因とされています。
具体的には、他の入居者が容易に立ち入れるスペースに機密書類を放置してしまったり、共用のネットワークを通じて社内データに不正アクセスされたりするリスクが考えられます。
この例から分かるように、情報の物理的および技術的な保護が徹底された環境でなければ、情報漏洩のリスクを極小化することは難しいという現実があります。
従業員が安心して働ける環境を整える
セキュリティ対策は、情報を守るだけでなく、そこで働く人々の心理的安全性にも直結しています。例えば、誰でも自由に入ってこられるような共有スペースのすぐ横で業務を行う場合、背後を通り過ぎる人に画面を見られないかと常に気を張る必要があります。
このような環境では、業務への集中力が削がれ、本来のパフォーマンスを発揮することが難しくなります。夜遅くまで残業する際にも、防犯対策が甘い建物では身の危険を感じるかもしれません。
安全が担保されたオフィス環境を用意することで、従業員は余計なストレスを感じることなく、安心して目の前の業務に専念できるようになります。
物理的セキュリティで確認すべき5つのチェックポイント

情報のデジタル化が進む現代においても、物理的なセキュリティ対策の重要性は変わりません。レンタルオフィスを見学する際には、建物への侵入経路や執務スペースの構造など、目に見える防犯設備をしっかりと確認することが推奨されます。ここでは、物理的な観点から確認すべき5つの項目を解説します。
ICカードや生体認証による入退室管理
オフィスの入り口や各フロアの扉において、どのような入退室管理システムが導入されているかは非常に重要です。例えば、昔ながらの金属キー(シリンダーキー)の場合、鍵の複製や紛失による不正侵入のリスクが高まります。
一方で、ICカードや指紋・顔認証を用いた生体認証システムが導入されていれば、登録された人物しか扉を開けることができません。誰がいつ入退室したかというログ(記録)がシステム上に残るため、万が一トラブルが起きた際の原因究明にも役立ちます。
最新の認証システムが導入されているオフィスは、不審者の侵入を入り口でシャットアウトできる安全な環境だと言えます。
スタッフ常駐の受付サービスの有無
システムによる機械的な管理だけでなく、人の目による監視があることで防犯効果はさらに高まります。平日の日中などに受付スタッフが常駐しているオフィスであれば、来客時の対応を任せられるだけでなく、不審な人物が建物に入ろうとした際に心理的なハードルとして機能します。
具体的には、宅配業者のなりすましや、他の入居者の来客に紛れて侵入する共連れといった手口を防ぐことが可能です。
機械と人の両面から入り口を監視する体制が整っているかを確認しておくことで、より高いレベルの安心感を得ることができます。
防犯カメラの設置場所と監視体制
防犯カメラは、犯罪の抑止と事後検証の両面で効果を発揮する設備です。エントランスやエレベーターホールだけでなく、各フロアの廊下や共有ラウンジなど、死角になりやすい場所にカメラが設置されているかを確認することが大切です。
例えば、機密書類を捨てるシュレッダーの近くや、複合機の周辺にカメラがあれば、意図的な情報の持ち出しを牽制する効果が期待できます。カメラの映像が一定期間適切に録画および保存され、管理会社によって厳重に管理されているかどうかも大切なポイントです。
設置されているだけでなく、実際に運用体制が機能しているかを見極める必要があります。
天井まで壁がある完全個室の構造
レンタルオフィスの執務スペースには、天井付近に隙間が空いている欄間(らんま)オープンと呼ばれる構造と、床から天井まで壁で完全に仕切られた完全個室があります。セキュリティを重視するのであれば、後者の完全個室を選ぶことが基本です。
欄間オープンの場合、隣の部屋との間に隙間があるため、電話の声や会議での会話が筒抜けになってしまいます。総務省が公開する「テレワークセキュリティガイドライン」でも、サテライトオフィス等で業務を行う際は、周囲への情報漏洩(音漏れやのぞき見など)に注意を払うよう呼びかけられています。
完全個室であれば、会話内容の漏洩を防ぐだけでなく、他の入居者の視線を遮断して業務に集中できるという利点があります。
鍵付きのロッカーやキャビネットの有無
執務室内における書類や持ち物の管理も、物理的セキュリティの一部です。パソコンや重要書類を机の上に出しっぱなしにして帰宅することは、盗難や情報漏えいのリスクを高める原因となります。
そのため、執務室内に専用の鍵付きキャビネットやロッカーがあらかじめ設置されているか、あるいは持ち込みが許可されているかを確認しておきます。従業員が一時的に離席する際にも、パソコンをさっとしまって施錠できる環境があれば、盗難のリスクを大幅に減らすことができます。
日々の業務の中で、自然と情報を保護できる収納設備が整っているかどうかも有用な判断基準となります。
| チェック項目 | 具体的な確認内容 | 期待できる防犯効果 |
| 入退室管理システム | ICカード、顔認証、スマホアプリ認証 | 不正侵入の防止、入退室履歴の自動記録 |
| 有人受付 | 平日日中のスタッフ常駐、来客対応 | 不審者の侵入抑止、共連れの防止 |
| 防犯カメラ | エントランス、廊下、共用設備周辺の設置 | 犯罪の抑止、トラブル発生時の証拠保全 |
| 個室の構造 | 天井まで壁がある完全防音仕様か | 音漏れによる機密漏洩の防止、視線の遮断 |
| 収納設備 | 鍵付きキャビネット、個人用ロッカー | パソコンや書類の盗難防止、クリアデスクの維持 |
ネットワークセキュリティで確認すべき4つのチェックポイント
レンタルオフィスでは、インターネット回線があらかじめ用意されていることが多く、入居後すぐに業務を始められるという利便性があります。しかし、複数の入居者が同じネットワーク環境を共有するからこそ、サイバー攻撃や情報漏えいに対する技術的な防壁が求められます。ここでは、ネットワーク環境に関して確認すべき4つの項目を解説します。
契約者ごとにSSIDが提供されるか
オフィスのWi-Fiを利用する際、すべての入居者が同じSSID(ネットワーク名)とパスワードを使っている環境は非常に危険です。悪意のある入居者がいた場合、同じネットワーク内にあるパソコンの通信内容を傍受されたり、共有フォルダに不正アクセスされたりする恐れがあります。
これを防ぐためには、契約する企業(あるいは個室)ごとに個別のSSIDとパスワードが割り当てられているかを確認することが重要です。具体的には、仮想LAN(VLAN)という技術を使って、企業ごとにネットワークが論理的に分割されている環境が理想的です。
他の入居者から自社のネットワークが見えない状態が確保されていれば、通信の傍受リスクを大きく下げることができます。
最新の暗号化方式を採用しているか
Wi-Fiの電波を暗号化する方式も、セキュリティレベルを左右する要素です。古い暗号化方式であるWEPやWPAは、現在では専用のツールを使うことで容易に解読されてしまう脆弱性が指摘されています。
そのため、WPA2、あるいはより強固な最新規格であるWPA3を採用しているネットワーク設備であるかを確認しておく必要があります。顧客の個人情報やクレジットカード情報を扱う通信を行う場合、暗号化が弱いネットワークを使用することは企業にとって大きなリスクとなります。
最新の暗号化方式が採用されているオフィスを選ぶことで、外部からの不正な通信傍受を防ぐことが可能です。
専用回線を個別に引き込めるか
自社の業務において高いセキュリティレベルが求められる場合、レンタルオフィスが提供する共有回線を使用せず、自社専用の光回線を個別に引き込むという選択肢があります。
システム開発会社や金融関連の事業を行う企業では、社内規定によって共有ネットワークの利用が禁じられているケースが珍しくありません。そのような場合、個室内に独自のインターネット回線を引き込む工事が許可されているかどうかが、オフィス選びの決定的な要因となります。
専用回線を導入できる柔軟なオフィスであれば、自社の規定に合わせた独自のセキュリティポリシーを構築することができます。
ICカード認証式の複合機が設置されているか
共有スペースに設置されているプリンターや複合機も、情報漏洩の盲点になりやすい設備です。パソコンから印刷指示を出した後、複合機まで書類を取りに行く間に、別の入居者に印刷物を見られたり、間違えて持ち去られたりするリスクがあります。
これを防ぐ機能として、複合機にICカードをかざした時に初めて印刷が開始されるセキュリティプリント(認証印刷)機能が導入されているかを確認します。自分が複合機の前にいる時だけ印刷が行われるため、放置された書類からの情報漏洩を確実に防ぐことができます。
日常的に印刷を多く行う企業にとって、共有複合機の認証機能は有効な防犯対策となります。
| チェック項目 | 理想的な状態 | 確認する理由とリスク回避 |
| ネットワークの分割 | 企業ごとに個別のSSIDとVLANが設定されている | 他の入居者による通信傍受や共有フォルダへの侵入を防ぐ |
| Wi-Fiの暗号化方式 | WPA2またはWPA3が採用されている | 古い規格による暗号解読を防ぎ、通信内容を保護する |
| 回線引き込み工事 | 個別の光回線導入が許可されている | 自社の厳しいセキュリティ基準を満たす専用環境を構築する |
| 複合機の印刷機能 | ICカード認証によるセキュリティプリント対応 | 印刷物の取り忘れや第三者への意図せぬ情報漏洩を防ぐ |
レンタルオフィスのセキュリティを確認する流れ

ここまで解説してきた物理的およびネットワーク的なチェックポイントを踏まえ、実際にオフィスを検討する際にどのような手順で確認を進めればよいのかを整理します。見学時や契約前に適切な質問を行うことで、入居後のトラブルを未然に防ぐことができます。
手順1:公式サイトでセキュリティポリシーを確認する
最初のステップとして、候補となるレンタルオフィスの公式サイトを隅々まで確認します。セキュリティに力を入れている運営会社であれば、防犯カメラの設置状況や入退室管理システムの種類、ネットワークの暗号化方式などが明確に記載されています。
例えば、設備紹介のページにVLANによるネットワーク分割やICカード認証といった具体的な用語が並んでいるオフィスは、防犯に対する意識が高いと判断できます。逆に、セキュリティに関する記述が極端に少ない場合は、次のステップで慎重に確認する必要があります。
事前に公開情報を集めておくことで、現地での確認作業をスムーズに進めることができます。
手順2:問い合わせフォームで詳細な項目を質問する
公式サイトを見ても分からなかった詳細な仕様については、内覧を申し込む前に問い合わせフォームや電話で直接質問します。見学当日に質問しても、案内担当者がネットワークの専門的な仕様を即答できないケースがあるためです。
共有Wi-Fiの暗号化方式はWPA2以上か、執務室は天井まで完全に塞がれた構造かといった要件を文章でまとめて送っておきます。
事前に運営側へ質問を投げかけておくことで、自社が求める要件を満たしているかを効率よくスクリーニングすることが可能です。
手順3:内覧で実際の設備と運用状況を確かめる
現地へ内覧に行く際は、Web上の情報と実際の設備にギャップがないかを自分の目で確かめます。エントランスの受付スタッフが来訪者をどのようにチェックしているか、防犯カメラが死角なく設置されているかなどを観察します。
案内される個室の壁を軽く叩いて材質を確認したり、扉の隙間から外の音がどれくらい聞こえるかを確認したりすることも大切です。例えば、隣の部屋で担当者に声を出してもらい、音漏れのレベルを実測するのも有効な手段と言えます。
カタログスペックだけでなく、実際の空気感や運用状況を肌で感じることで、入居後の働くイメージを正確に掴むことができます。
手順4:契約前に利用規約を隅々まで確認する
最後のステップとして、申し込みを行う前に利用規約や契約書の細部を読み込みます。万が一オフィス内で盗難や情報漏洩が発生した場合の責任の所在や、運営会社側の免責事項がどのように定められているかを確認しておくことが重要です。
共用部分での荷物の紛失については一切責任を負わないという条項がある場合、自社での持ち物管理をより一層厳重にする必要があります。専用回線の引き込み工事に関する原状回復のルールなども、この段階でクリアにしておきます。
契約後の認識のズレを防ぐためにも、疑問に思った文言は署名する前に必ず担当者に確認し、納得した上で手続きを進めることが求められます。
企業ごとの個別要件に柔軟に対応できるかを確認する
レンタルオフィスを検討する際、あらかじめ用意された標準の防犯設備だけでなく、自社が求める独自の基準を満たせるかどうかが非常に大切です。企業の規模や扱う情報によって、求められる安全性のレベルは大きく異なるからです。ここでは、企業ごとの個別要件に柔軟に対応できるオフィスの特徴を解説します。
| セキュリティの観点 | 柔軟な対応の具体例 | 期待できる効果 |
| 情報セキュリティ | ISMSやPマークの要件を満たす設備導入 | 顧客や取引先からの対外的な信用力の向上 |
| ネットワーク | 共用回線とは別の自社専用ネットワーク構築 | 社内規定のクリアとサイバー攻撃リスクの低減 |
| 物理的な安全対策 | 個室の施錠強化や来訪者の厳密な受付対応 | 不審者の侵入防止と情報漏洩の物理的遮断 |
| 個別のアレンジ | 標準仕様に縛られない設備のカスタマイズ | 自社の業務フローに最適な安全環境の実現 |
第三者認証の要件を満たせるか
レンタルオフィスであっても、高度な情報セキュリティに配慮した設備や運用に対応できる場合があります。特に、ISO27001(ISMS)やプライバシーマークといった第三者認証を意識した環境整備ができるかどうかは、重要な確認項目です。
例えば、共用スペースとは明確に区切られた執務エリアの確保や、機密書類を安全に保管できる専用キャビネットの設置などが該当します。このような環境整備が可能なオフィスを選ぶことで、認証取得や維持の条件をクリアしやすくなるでしょう。
つまり、事業の成長に合わせて高度な情報管理体制を構築できるということです。
独自回線を個別に構築できるか
共用のネットワークを利用するだけでなく、自社専用のネットワーク環境を個別に構築できるかどうかも確認したい項目です。金融機関やシステム開発会社など、特定の業種では社内基準によって共有回線の利用が制限されているケースがあります。
具体的には、専用の光回線を引き込んだり、独自のファイアウォールを設置したりといった個別設計に対応できるオフィスが求められます。業種や社内規定に応じたネットワークのカスタマイズが可能であれば、サイバー攻撃のリスクを抑えつつ安全に業務を進めることが可能です。
自社の要件に合わせた通信環境を作れることは、事業を安定させるために非常に有益だと言えます。
物理的な基本対策が十分か
ネットワークなどの見えない部分だけでなく、オフィスとしての基本的な物理的安全性も引き続き重要になります。入退室の厳密な管理や個室の施錠はもちろんのこと、共用部の適切な管理体制が整っているかを確認する必要があるでしょう。
例えば、受付スタッフが来訪者の身元を都度確認して記録を残す運用や、部外者が無断で立ち入れないゾーニング設計などが挙げられます。こうした基本的な防犯対策が徹底されていることで、情報が物理的に持ち出されるリスクを大幅に減らすことが可能です。
目に見える安全対策は、従業員が安心して働くための強固な基盤となります。
個別要件に柔軟に対応できるか
企業が抱えるセキュリティの課題や要件は、それぞれ大きく異なります。そのため、あらかじめ用意された標準仕様の設備だけでなく、自社の状況に合わせて個別のアレンジに対応できる柔軟性が大切です。
例えば、特定の扉にのみ追加の生体認証システムを導入したり、独自の監視カメラを個室内に設置したりといった相談に乗ってくれる運営会社も存在します。標準的な枠組みを超えて個別の要件に寄り添ってくれるオフィスであれば、事業フェーズが変化しても長く使い続けることができるでしょう。
自社に最適な防犯環境をオーダーメイドできるかどうかが、オフィス選定の鍵を握ります。
まとめ
この記事の要点をまとめます。
- ISO27001やISMSなどを意識した情報セキュリティ環境を整備する
- 業種や社内基準に合わせて独自のネットワーク環境を構築する
- 入退室管理や来客対応といった物理的な基本防犯を徹底する
- 標準仕様に縛られず個別のアレンジに柔軟に対応できるオフィスを選ぶ
レンタルオフィスのセキュリティは標準設備だけでなく、情報セキュリティ・ネットワーク・運用面まで含めて、企業ごとの要件に柔軟に対応できる安全な環境を選定していきましょう。
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