Published: 令和6年9月25日
Updated: 令和6年10月23日
Category: Workspace

海外オフィスの進化:キュービクルからフレキシブルへ

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近年のオフィスは親世代などかつての職場環境とは大きく異なっています。昔と異なるのはオフィスの内装だけの話ではありません。オフィス環境は人員や新たな技術に合わせて発展し、職場環境の理論と実際に応じて変化してきました。

日本では島型(対向型)レイアウトが長年に渡り主流ですが、海外のオフィスデザインはキュービクル型オフィスの誕生から、昨今世界中で利用できるフレキシブル・オフィスまで進化しています。この記事ではオフィスの進化、働き方の変化と未来について説明します。

 

オフィスの起源

 

専用の仕事をする場所を持つという考え方自体は、新しいものではありません。例えば、私たちの祖先は、水源の近くに洗濯を担当する人々の「作業空間」を設けていました。しかし、現代の職場空間、つまりグループで作業できる場所の起源は、単なる利便性だけではなく、生産性向上を目的としたものでした。

最初に専用オフィスは、18世紀のロンドンで建てられたとされます。当時のイギリス海軍は、イギリス帝国の拡大の中で、膨大な量の書類を生み出していたため、それらを集めて整理するため専用の活動場所が必要だったのです。つまり、書類が、企業オフィスという世界誕生のきっかけだったのです。

書類作業を好むと好まざるとにかかわらず、この2世紀の間に世界は大きく変わりました。私たちのオフィス環境も、単に労働者を整理し、生産性を高めるだけでなく、今日ではおしゃれで、刺激的で、そして何よりもフレキシブル(柔軟)な場所となっています。

作業空間の進化を詳しく見てみましょう。そして、将来のオフィスはどうなっていくのか考えてみましょう。

 

作業空間の時代ごとの変遷

 

以下では現代の作業空間における3つの主要な変化を取り上げます。

20世紀初頭のオープンプランオフィスという発想、1960年代のキュービクル型オフィスの普及、そして最近の新型コロナウイルスの世界的大流行による在宅勤務への移行です。

 

20世紀初頭 - オープンプランオフィス

 

オープンプランオフィスは壁や間仕切りがなく、開放的な雰囲気の一方で、同僚との境界がなく、集中しずらい、プライバシーが侵害されると従業員たちの間では人気が低いことで知られます。ところが、もとは、オープンプランオフィスは別の意図を持って提唱されたことをご存知でしょうか。

20世紀初頭のモダニズムの建築家たちは、労働者の間にある物理的な壁を取り除くことが、思想的な壁を取り除く鍵でもあると考えていました。彼らは、実際の壁を取り壊すことが、労働者間の社会的な分断を取り払い、彼らを団結させる象徴的な方法だと理想を描いたのです。

しかしながら、多くのオフィスがオープンプランを採用した実際の理由は、そのような理想だけではありません。企業の目的は、スペースあたりの労働者を増やすためでした。

Scientific Americanによると、多くの企業が個室オフィスを作る代わりにオープンプランを採用した理由は、1つのスペースにできるだけ多くの労働者を詰め込み、長い机の列を作り、その単一空間でより多くの労働者が作業できるようにするためだったのです。これによりスペースに対するコスト効率は向上しました。

 

20世紀後半 – キュービクル型オフィスの登場

 

1960年代、ロバート・プロプストというデザイナーがキュービクル(Cubicle)型オフィスを発明しました。パーティションで個人のワークエリアを仕切るブース型アメリカで主に見られるオフィススタイルです。

もともと、キュービクルは、移動可能で柔軟性があり、カスタマイズ可能なオフィスデザインとして考案されました。労働者間に仕切りを設けてプライバシーを提供しつつ、それらを移動させて拡大する(残念ながら縮小することもありましたが)ことにより、雇用主は永続的なオフィスを建てる費用をかけずに生産性を高めることができました。これが、現代のフレキシブルなオフィススペースの前身であり、拡張や縮小が容易になりました。

しばらく続いたオープンプランオフィスの結果、雇用主はあることに気づきました。それは、オープンプランオフィスの従業員よりも、プライバシーが与えられて静かな環境で働くことができた管理職のほうが、生産性が向上したことでした。

そこで、プロプストが一般の職場にプライバシーを提供するための手頃な方法としてキュービクルを開発すると、企業はすぐにそれを採用しました。

本来のプロプストのビジョンは、広々としたエリアと異なる高さの壁を持つ柔軟な作業空間であり、プライベートでありながら排他的ではなく、同時に包括性を提供するものでした。

しかし、企業は異なる導入方法を取りました。彼らは、モジュール家具(様々なボックスや板、シェルフなどを組み合わせて作る収納家具)と壁の仕切りを購入し、できるだけ多くの同じような小さな空間を作ったのです。これが「キュービクル」の誕生でした。

ところが、キュービクルは、雇用主が期待したほど生産性を向上させませんでした。カリフォルニア大学の研究によると、キュービクルで働く従業員は、通常のオフィスで働く従業員に比べて29%も多く中断されることが分かりました。キュービクルは音や気を散らすものを遮断できるのではなく、ただ労働者を狭い空間に閉じ込めてしまうのです。

ジャーナリストのエリン・ブレイクモアがHISTORYで述べたように、プロプストは「企業の怪物を作り出してしまった」と残りの人生の間、後悔の念を示していたといいます。

 

21世紀初頭 – フレキシブルな働き方が標準に

 

21世紀に入ると、技術の進化により、インターネット接続さえあれば、世界中のどこからでもオフィス業務を行えるようになりました。実際に、ハイブリッド勤務や完全なリモートワークが広く普及するようになったのは、新型コロナウイルスの世界的大流行によって、企業が在宅勤務を導入するか、完全に業務を停止させる必要に迫られたためでした。

ハイブリッド勤務では、オフィスで働く時間と自宅で働く時間を組み合わせます。一方、完全なリモート勤務では、働く人同士が全く対面で会うことなく全ての就労時間を自宅で作業します。

在宅勤務では、従業員はより快適な環境で働くことができ、雇用主による管理は少なくなります。例えば、従業員は自分で服装を選んだり、デスクで自由に好きなものを食べたり飲んだりできるため、在宅勤務ははるかに柔軟な働き方となります。他方、雇用主にとっては、スペースの確保や管理サポートの提供、企業文化の形成に費用をかける必要がなくなり、全てはタスクの提供とリモートワーカーの能力に任せる形になります。

リモートワークの人気が高まりは当然とも言えます。フォーブス誌の報告によると、2024年現在、5人に1人がリモートで働いており、98%の労働者が少なくとも一部の時間はリモートで働きたいと考えているそうです。

 

この新しい在宅型作業空間には、従業員にとって多くの利点があります。


● ワークライフバランスの向上

● 気が散らず集中できる

● 作業環境を自分好みにカスタマイズ(空調の温度が合わない悩みからも解放されます)

● 会議に費やされる時間の短縮

 

雇用主が労働者を作業空間に戻したいのであれば、プライバシーを奪うオープンプランオフィスや生産性の上がらないキュービクル型オフィスを見直し、従業員のニーズに応えるオフィスを提供する必要があります。

そうすると、これからはどのようなスタイルの働き方が望ましいのでしょうか?次に、未来の作業空間について考えてみましょう。

 

未来の作業空間とは?

 

従業員にとっては職場の中だけが重要なのではありません。昨今では、都市から離れ、家族を持つために余裕がある場所に住みたいと望む人、または世界中を旅しながら働きたいと考えている人もいます。

このような働き方の希望から、デジタルノマドのライフスタイルが増加しています。それでもなお、デジタルノマドでも、オンライン会議、クライアントに良い印象を与えるためのオフィススペース、海外で一時的な拠点を設けるための場所が必要です。そこで、最適な解決策が「柔軟な作業空間」です。

ハイブリッドスケジュールで働く従業員や世界中でリモート勤務を行う従業員を抱える企業にとって、1か所だけに永続的なオフィスを持つことは、これからのビジネスニーズを満たすには充分ではありません。世界中の都市でオフィスルームを借りることが、多くの企業にとって未来の形となるでしょう。

 

私たちが予測する未来の作業空間は次の通りです。


● オフィスはリモートでは完結できないチームタスクや会議のために使用する

● オープンスペースのメリットは活かされるが、ワークステーション同士の間隔は広がる

● 美的要素がさらに重要に。細かく区分されたキュービクルよりもスッキリとしたプロフェッショナルなオフィススペースのほうが魅力的。高級感とリラックスした雰囲気を持つラウンジエリアがこれまで以上に重要になる

● オフィスは世界中に分散し、多くの企業が不動産購入や管理人を雇う代わりに、レンタルオフィスやコンシェルジュサービスを利用することになる

 

柔軟性こそが、従業員、雇用主、そしてデジタルノマドが求めているものです。働き方、職場の将来は、その柔軟性を満たし、全体的な生産性の向上につながるオフィススペースを作り上げることになるでしょう。

 

まとめ

 

作業空間は、かつては小さな区画のキュービクルや、従業員が詰め込まれたオフィスでしたが、未来の作業空間ははるかに柔軟なものになるでしょう。テクノロジーが身近にある今、私たちはオフィススペースを賢く使い、世界中のどこからでも働くことが可能です。雇用主にとって、また、柔軟な働き方を好む人やデジタルノマドを含めた優秀な人材にとって、それはwin-winの最適解となるでしょう。

 

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